SSTを用いたインプラント治療 10年経過症例

2025年12月17日

患者:S.G様(55歳/男性)
初診日 :2014年6月10日
主訴 :義歯が嫌いで使わず奥歯が咬めないので、全体の治療を希望する

治療計画 :
・上顎補綴物再製
・右下2本インプラント
・左下ジルコニアクラウンブリッジ


1.初診時口腔内写真(2014年6月)


2.治療終了(2016年6月)

・上顎補綴物再製
・右下2本インプラント
・左下ジルコニアクラウンブリッジ


3.前回治療後5年経過(2021年2月)

【左下ブリッジ5番6番歯根破折の為要抜歯】

【左下5番ソケットシールドテクニック

【ソケットシールドテクニックにて頬側骨の形態を維持する (右の様な骨のへこみを作らない)】

【通常の抜歯により唇側骨(外側の骨)が吸収してへこんだ症例】

※ 通常、ソケットシールドテクニックは前歯部領域に用いるが小臼歯部でも採用しました

審美領域における骨吸収を防ぐためのPET技法の歴史
 近年、審美インプラント治療の進化により術者サイドの技術的、肉体的ストレスの軽減、患者サイドへの外科的侵襲度の劇的な軽減を可能とするテクニックが報告されている。審美領域で抜歯を行う際、束状骨の吸収により抜歯窩の形態を維持できず、唇・頬側の骨吸収が起こる。
 これに対し、2007年にMaurice、石川、船登らは、ポンティックサイトであれば歯根を軟組織下に保存することで、歯周組織ごと歯槽堤を保存するRST(Root Submergence Technique)を発表した。2010年Hürzelerらは、インプラントサイトで抜歯即時埋入部位を唇舌的に分割し、唇側の歯牙片を保存して舌側の歯牙片を抜歯するSST(Socket Shield Technique)を報告した。
 さらに2016年にGluckmanらは、ポンティック部位に歯牙片を残すPST(Pontic Shield Technique)を発表した。 Gluckman H, Salama Mらはこれらの3つテクニック【RST、SST、PST】をPET(Partial Extraction Therapy)と総称した。また、現在では船登らによりHIT placement(Hybrid Implant Tooth placement)もPETに加えられている。

PET(Partial Extraction Therapy)パーシャルエクストラクションセラピーとは?
以下4つの技法の総称
① RST(Root Submergence Technique)ルートサブマージェンステクニック
・・・歯と歯の間(ポンティックサイト)で有れば歯根を軟組織下に保存することで、歯周組織ごと歯槽堤を保存する
② PST(Pontic Shield Technique)ポンティックシールドテクニック
・・・歯と歯の間(ポンティックサイト)で有れば歯根片を軟組織下に保存することで、歯周組織ごと歯槽堤を保存する
③ SST(Socket Shield Technique)ソケットシールドテクニック
・・・インプラント治療で抜歯即時埋入部位を唇舌的に分割し、唇側(外側)の歯牙片を保存して舌側(内側)の歯牙片を抜歯して抜歯窩治癒後の顎の骨の唇側(外側)の吸収を抑える技術
《 適応症 》
・ う蝕、メタルポストコアが太く、残存歯質が薄くて保存不可能
・ 根尖病変による予後不良の診断を予測する
・ 歯根破折やマイクロクラックを認め予後不良の診断を予測する
・ 外部吸収を認め予後不良の診断を予測する
・ いわゆる戦略的抜歯
④ H I T(Hybrid Implant Tooth placement)ハイブリッドインプラントトゥースプレイスメント
・・・抜歯直後の歯槽骨や歯ぐきがまだ残っている状態を最大限活かして骨が減る前にインプラントを埋入する治療法


4.左下5番ソケットシールドテクニック

【ソケットシールドテクニックにより保存した歯牙片の内側にインプラントを埋入するCTシミュレーション】

【上記シミュレーションにて作製したガイドを用いたインプラント埋入】


5.インプラント埋入(2021年6月)

※ 初期固定35N/cm確認する


6.二次手術

インプラント周囲の角化歯肉(付着歯肉:骨に固定されてる歯肉)の獲得を目的に歯肉弁を移動する


7.インプラントの型どり

インプレッションコーピングを用いての型どり
➡インプラントの“正確な位置”を模型に再現するための型取り専用パーツのこと。これを付けて印象採得することで、被せ物が口の中でぴったり合う精密な補綴物を作ることができます。


8.補綴物完成(埋入後5か月)


9.左下3本最終補綴装着(2021年11月)


10.口腔内写真(2022年2月)

特に問題無く経過はとても良いです。
患者様ご本人も「良く咬めてとても良い」と満足されています。


11.口腔内写真(2025年6月)

右下2本初診より9年経過、左下3本埋入後4年経過、ともに経過良好。

 

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