SSTとPSTを用いたインプラント埋入症例

2025年12月26日

患者:Y.S 様
初診日 :2018年10月
主訴 :上顎前歯部審美障害、臼歯部補綴治療
治療計画 :
1.前装冠除去、メタルコア除去にて破折確認の為インプラント治療となる
2.右上1番 P.S.T(ポンティックシールドテクニック)
3.右上2番 S.S.T(ソケットシールドテクニック)
4.左上1番 S.S.T(ソケットシールドテクニック)
5.左上2番 S.S.T(ソケットシールドテクニック)
6.左下6・7番 インプラント


1.初診時口腔内写真(2018年10月)

審美領域における骨吸収を防ぐためのPET技法の歴史
 近年、審美インプラント治療の進化により術者サイドの技術的、肉体的ストレスの軽減、患者サイドへの外科的侵襲度の劇的な軽減を可能とするテクニックが報告されている。審美領域で抜歯を行う際、束状骨の吸収により抜歯窩の形態を維持できず、唇・頬側の骨吸収が起こる。
 これに対し、2007年にMaurice、石川、船登らは、ポンティックサイトであれば歯根を軟組織下に保存することで、歯周組織ごと歯槽堤を保存するRST(Root Submergence Technique)を発表した。2010年Hürzelerらは、インプラントサイトで抜歯即時埋入部位を唇舌的に分割し、唇側の歯牙片を保存して舌側の歯牙片を抜歯するSST(Socket Shield Technique)を報告した。
 さらに2016年にGluckmanらは、ポンティック部位に歯牙片を残すPST(Pontic Shield Technique)を発表した。 Gluckman H, Salama Mらはこれらの3つテクニック【RST、SST、PST】をPET(Partial Extraction Therapy)と総称した。また、現在では船登らによりHIT placement(Hybrid Implant Tooth placement)もPETに加えられている。

【 通常の抜歯により唇側骨(外側の骨)が吸収しへこんだ症例 】


2.前装冠除去、メタルコア除去


3.サージカルガイド(インプラント埋入用)作製(2019年3月)

PET(Partial Extraction Therapy)パーシャルエクストラクションセラピーとは?
以下4つの技法の総称
① RST(Root Submergence Technique)ルートサブマージェンステクニック
・・・歯と歯の間(ポンティックサイト)で有れば歯根を軟組織下に保存することで、歯周組織ごと歯槽堤を保存する
② PST(Pontic Shield Technique)ポンティックシールドテクニック
・・・歯と歯の間(ポンティックサイト)で有れば歯根片を軟組織下に保存することで、歯周組織ごと歯槽堤を保存する
③ SST(Socket Shield Technique)ソケットシールドテクニック
・・・インプラント治療で抜歯即時埋入部位を唇舌的に分割し、唇側(外側)の歯牙片を保存して舌側(内側)の歯牙片を抜歯して抜歯窩治癒後の顎の骨の唇側(外側)の吸収を抑える技術
《 適応症 》
・ う蝕、メタルポストコアが太く、残存歯質が薄くて保存不可能
・ 根尖病変による予後不良の診断を予測する
・ 歯根破折やマイクロクラックを認め予後不良の診断を予測する
・ 外部吸収を認め予後不良の診断を予測する
・ いわゆる戦略的抜歯
④ H I T(Hybrid Implant Tooth placement)ハイブリッドインプラントトゥースプレイスメント
・・・抜歯直後の歯槽骨や歯ぐきがまだ残っている状態を最大限活かして骨が減る前にインプラントを埋入する治療法


4.右上2番 S.S.T(ソケットシールドテクニック)


5.左上1番 S.S.T(ソケットシールドテクニック)


6.左上2番 S.S.T(ソケットシールドテクニック)


7.サージカルガイドによるインプラント埋入手術


8.テンポラリーヒーリングアバットメント装着して仮歯の作製

テンポラリーヒーリングアバットメントとは・・・インプラント手術後、歯ぐき(軟組織)が治癒し、最終的な人工歯が装着されるまでの間、インプラントに装着される一時的な土台のこと


9.仮歯装着


10.右上1番 P.S.T(ポンティックシールドテクニック) (2019年10月)


11.舌側歯牙片の抜歯


12.左下6・7番埋入サージカルガイド作製


13.サージカルガイドによる埋入手術(2019年5月)


14.インプラント埋入

※ 初期固定35N/cm確認する

※ 埋入後の縫合は強さに十分注意する


15.角化歯肉の獲得の為に歯肉弁根尖側移動術(2019年8月)

歯肉弁根尖側移動術とは・・・歯やインプラントの周りを磨きやすくし、長持ちさせるため、歯ぐきを下の方向(歯の根の方)へ動かして固定し、安定した歯ぐきを増やす手術

① 炭酸ガスレーザーにてインプラントヘッド部のパンチアウト

② 骨頂部の歯肉を骨膜を残して剥がし、反転する

ISQ値 79、81 良好な数値

ISQ値(オステル値)とは・・・Implant Stability Quotientの略
「インプラント安定指数」といい、安定性を示す指標の一つ。インプラントが骨にどれくらいしっかり固定されているかを数値で表したもの。1~100の数値で表され、一般的には、70以上:比較的安定80以上:かなり安定と判断されることが多い。このISQを測定する器械をISQ測定器、もしくは共振周波数分析器という。


16.歯肉弁を根尖側に移動し縫合を行ったのち、歯周パックにて創面の保護


17.シリンダーテック作製(2019年10月)

側方から見て形状の確認


18.インプラント埋入後 パノラマレントゲン


19.アバットメント装着(2020年1月)

ISQ値 右上2 (71)  左上1 (73) 左上2 (72)


20.最終補綴作製開始(2020年6月)


21.ジルコニアブリッジ試適(2020年12月)


22.最終補綴物完成・装着口腔内写真(2021年1月)


23.自然な形態のインプラント歯頚部

適切な治療計画と治療技術を有することで、このような自然な形態のインプラント歯頚部を形成することができます。


24.口腔内写真

【 2018年 術前 】

【 2025年5月 現在 】

 

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